【大腸のおはなし59】肛門温存と直腸温存(臓器温存)の違い
2023.02.26
肛門温存と直腸温存(臓器温存)の違い
がんの深さが筋層を越える、またはリンパ節転移を伴うような直腸がん(局所進行直腸がん)に対する治療としては、近年以下のような治療法があります。
- ● 手術[直腸切除とリンパ節郭清]
- ● 放射線療法
- ● 化学療法(臨床試験)
- ● TNT[放射線治療+化学療法](臨床試験)
肛門温存
肛門温存は、直腸を切除する手術はするけれど、肛門は温存することをいいます。ISR手術や超低位前方切除術は肛門温存をする手術方法です。
直腸温存(臓器温存)
直腸温存(臓器温存)は、手術前にTNT[放射線治療+化学療法]をおよそ6ヶ月かけて行います。TNT終了後に腫瘍の状態を再評価して、腫瘍が著名に縮小したり消失していた場合には、手術をせずに非手術管理(NOM:non-operative managemant)を行います。手術しないで、直腸がんの治癒を目指します。このことを、直腸温存(臓器温存)と言います。切除せずに治癒することで、LARSといった排便障害などの後遺症が生じずQOLが維持されると言われています。
臨床試験
直腸温存(臓器温存)は、開発途中の治療ですので、第3者が安全性を監視しながら行う臨床試験として実施します。当センターでは、臨床試験(ENSEMBLE試験)として行なっています。
シリーズ:大腸のおはなし
- 第1回「大腸、結腸、直腸の解剖」
- 第2回「大腸のはたらき」
- 第3回「大腸の構造」
- 第4回「大腸の細菌そう」
- 第5回「虫垂について その1」
- 第6回「虫垂について その2」
- 第7回「虫垂について その3」
- 第8回「下剤について その1」
- 第9回「下剤について その2」
- 第10回「腸管メラノーシス」
- 第11回「大腸がん検診のすすめ」
- 第12回「大腸がんのリスク:赤身肉や加工肉」
- 第13回「大腸がんのリスク:お酒をよく飲む(日本人は注意が必要)」
- 第14回「大腸がんのリスク:糖尿病」
- 第15回「大腸がんのリスク:肥満」
- 第16回「大腸がんの個別化医療について」
- 第17回 「大腸がんのリスク:喫煙」
- 第18回 「大腸がんのリスク:50歳以上」
- 第19回 「若年層の大腸がん発症率がアップ」
- 第20回 「リキッドバイオプシーによる大腸がんの個別化医療」
- 第21回 「75歳以上でも大腸内視鏡検査は大腸がんリスクを低下」
- 第22回 「がん症状別レシピ検索 ーCHEER!ー」
- 第23回 「大腸がん手術の合併症予防1 術前呼吸リハビリ」
- 第24回 「大腸がん手術の合併症予防2 早期離床」
- 第25回 「大腸がんの化学療法 – 1次治療 -」
- 第26回 「大腸がんの化学療法 -2次治療 -」
- 第27回 「大腸がんの化学療法 -後方治療 -」
- 第28回 「大腸がんの化学療法 -BRAF変異大腸がん -」
- 第29回 「大腸がん手術の合併症予防3 食事」
- 第30回 「大腸がんの化学療法 -遺伝子プロファイリング-」
- 第31回 「誕生日」×「大腸がん検診」
- 第32回 「大腸がんにならないために出来る7つのこと」
- 第33回 「HER2陽性大腸がんに対する治療」
- 第34回 「MMR検査が薬事承認されました」
- 第35回 「免疫チェックポイント阻害薬がdMMR直腸がんで著効」
- 第36回 「世界の大腸がんの統合データベース開設」
- 第37回 「妊よう性の温存を応援します」
- 第38回 「大腸がんの治療の原則」
- 第39回 「大腸がん検診のながれ」
- 第40回 「私も大腸がん検診を受けてます」
- 第41回 「大腸がんの早期の症状」
- 第42回 「大腸がんを早く見つけて5つの楽を」
- 第43回 「大腸がんにならないために出来ること7つ」
- 第44回 「誕生日検診のすすめ」
- 第45回 「すべての大腸癌がロボット手術の適応に」
- 第46回 「大腸がんの5年生存率」
- 第47回 「大腸がんの診断のながれ」
- 第48回 「診断のための大腸がん検査」
- 第49回 「大腸がんの治療法」
- 第50回 「大腸がん治療の3つの柱」
- 第51回 「大腸がんのMMRが測定できるようになりました」
- 第52回 「大腸ってどこ、どんな構造?」
- 第53回 「大腸の頻度」
- 第54回 「大腸がんの予後」
- 第55回「大腸がんのリスク因子」
- 第56回 がんは粘膜から出てきます