[最終更新日 : 2024年6月24日]
大腸とは
大腸は、結腸(虫垂、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸(直腸S状部、上部直腸、下部直腸)、肛門管、肛門と続く約2mの管です。
小腸で栄養分の吸収が行われ、残りの消化物は大腸に送り込まれます。大腸は、小腸で吸収されなかった水分を吸収し、不要なものを固形状の便として肛門から排泄します。
大腸がんとは
大腸に発生するがんを大腸がんと言います。大腸の中で結腸(虫垂、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)に発生すると結腸がん、直腸に発生すると直腸がんと言います。大腸がんは日本でも近年増加傾向です。
症状
大腸がんの初期症状は、ほとんどありません。
がん検診を受けて、症状が出る前に見つけましょう。
早く見つければ、90%以上の確率で治癒が望めます。早期発見、早期治療がとても大切です。
進行すると、血便、腹痛、便秘、下痢、体重減少などの症状が出てきます。大腸がんは他のがんと比べて治療にによって治ることが多い病気です。症状がある方はすぐに受診しましょう。
原因
粘膜の細胞の遺伝子にキズがつくこと
大腸の粘膜の細胞(粘液を作る細胞)は、常にコピーされ新しい細胞に生え変わっています。この新陳代謝の過程で、コピーされた細胞の遺伝子にキズがつき、無秩序に増殖していまう細胞が発生してきます。この細胞がポリープになり、さらにキズがつくことで浸潤したり転移したりするようになります。
粘膜の細胞の遺伝子にキズがつくということは、血縁関係で遺伝するということではありません。
年齢
40代から増加しはじめ、高齢になるほど高くなります。近年、大腸がんの若年化が進んでいます。40歳以上は1年に1回の便潜血のがん検診が推奨されています。
最近、40代の大腸がん発生率が世界的に増えています。
生活習慣
運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられています。
①食生活の欧米化
食生活の欧米化によって、脂質や動物性たんぱく質の摂取量が増え、炭水化物や食物繊維の摂取量が減っています。そのため便が大腸内に停滞する時間が長くなる傾向があります。赤身肉や加工肉が、大きく関わっていると言われています。
②運動不足
モータリゼーション(自動車交通)の発達により、日本人の歩数は確実に減っています。そのため、発がん物質が、大腸粘膜に長く滞在してしまい、影響を受けると考えられています。
この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に増加していて、生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられていますが、特定の食品が「がんの発生」に関わっているわけではありません。
遺伝
詳細な原因はわかっておりませんが、血縁者に複数の大腸がんが認められることが約25%あるといわれています。
しかし、たとえ血縁者にがんになった人が複数いたとしても、それが遺伝性のがんとは限りません。遺伝するものはまれで、食生活や運動などの生活習慣などが原因となることが多いと考えられています。
血縁者に大腸がんの人がいるかどうかにかかわらず、生活習慣に気をつけたり、定期的に検診を受けることが大切です。
遺伝性
遺伝性大腸がんは、全大腸がんの5%未満と言われています。
①若年で発症しやすい
②大腸がんを繰り返し発症しやすい
③大腸がん以外の悪性腫瘍も発症しやすい
などの特徴があります。
50%の確率で親から子へと遺伝子異常が受け継がれていく優性(顕性)遺伝の場合が多く、大腸がんになるリスクは50%に満たないものからほぼ100%まで、疾患によって様々です。
代表的な疾患として家族性大腸ポリポーシス(通常、大腸にポリープを100個以上認める)とリンチ症候群(大腸がんや子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、腎盂・尿管がんなどの発症リスクが高まる)があげられます。
遺伝性大腸がんの特徴を持った患者さんの場合は専門医を受診し、必要に応じて遺伝カウンセリングや遺伝子診断を受けることができます。
リンチ症候群についてはこちらをご覧ください。
頻度
男性はおよそ11人に1人、女性はおよそ13人に1人が、一生のうちに大腸がんと診断されています。
この罹患率は増加傾向にあります。2017年では、罹患数が第1位になっております。また、年齢別にみると大腸がん(結腸・直腸・肛門がん)にかかる人の割合は、40歳代ごろから増加しはじめ、60〜70代でピークに達します。
引用:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
予後
日本での大腸がんによる死亡者数は年間5万人に達しております。年代別にみと年々増加しています。大腸がんは、がんによる死亡数の全体で第2位(男性3位、女性1位)です。
男性は27,416人、女性は24,004人の方が大腸がんで亡くなっています。
引用:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
診断方法
大腸がんは、比較的予後のいいがんです。
早期であれば90%近く治ります。早期の大腸がんは、一般的には自覚症状がないので、無症状の時期に発見することが重要です。
以下に大腸がんの診断に関係する検査について簡単に説明します。
大腸内視鏡検査
通常、検査は30分程度で終わり、多くの場合大きな苦痛はありません。
注腸造影検査
肛門から造影剤と空気を入れてX線撮影を行い、腸管の形からがんの位置や大きさ、腸の狭さなどを調べます。
CT
胸から骨盤までを撮影します。大腸がんの部位や周囲の臓器との位置関係、リンパ節転移や腹膜播種、肺や肝臓への転移の有無について調べます。
MRI
直腸MRIは直腸がんの深達度や周囲の臓器へのがんの広がり、またリンパ節転移の有無を調べます。肝臓MRIはCTより小さな肝転移の病巣を検出することに適しています。
PET
全身の転移検索を行う時に行います。他の方法でがん細胞は正常細胞と比べて糖代謝が活発であることが多く、18F-FDG という糖に放射性物質をつけたものを注射し、kの放射性物質が集まるところを検出します。PET/CT検査を行うことでがん細胞の状態や位置の詳細な情報を得ることができます。保険診療上、他の検査で転移・再発の診断が確定できない場合のみ検査対象となります。また、がんが小さい場合や、活発ではない場合には見つけられない可能性もあります。(必ず必要な検査ではありません)
腫瘍マーカー
血液検査でがんを調べる方法です。大腸がんでは、CEAとCA19-9が一般的です。通常、術後再発の確認などに使われることが多いです。早期がんでは上昇しないことがほとんどです。また、進行していても上昇しないこともありますので、実施のところはあくまで目安として使われています。
検査の流れ
検査をして、ステージ(進行度)を判断し治療方針を決めていきます。
大腸がんの検査と治療方針決定までの流れ
ステージ
大腸がんの早期がんと進行がん
大腸がんのステージ
大腸がんの進み具合(広がり)を「ステージ」と呼びます。
ステージは、以下の①~③の3つを総合して、ステージ0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの5段階に分類されます。ステージの数字が大きくなるほど、がんが進行している状態を表します。
①がんが大腸の壁に食い込んでいる程度 (深達度)—T因子
②リンパ節への転移の程度 (リンパ節転移度)—N因子
③肝臓や肺、腹膜など、ほかの臓器への転移の有無(遠隔転移)—M因子
ステージ0-IVは以下のようになります。
- ステージ0:がんが粘膜の中にとどまっている
- ステージI:がんが大腸の固有筋層までにとどまり、リンパ節転移がない
- ステージII:がんが大腸の固有筋層の外まで浸潤し、かつリンパ節転移がない
- ステージIII:がんの深達度に関わらず、リンパ節転移がある
- ステージIV:他の臓器や腹腔内への転移があるもの
ステージ別治療方針(標準治療)
多くの臨床試験の結果をもとに専門家が集まって検討を行い、専門家の間で合意の得られている治療法のことを「標準治療」といいます。大腸がんの治療では、ステージに応じて標準治療が設定されています。
ステージ0
ステージ0の大腸がんでは、がんは粘膜の中にとどまっているので、内視鏡によって大腸がんを切り取る治療をします。取り残しがなければ、ステージ0の大腸がんは内視鏡治療のみで完治します。
ステージI
ステージIの大腸がんの中で、大腸の壁への浸潤が軽いものに対しては、ステージ0と同様に、内視鏡でがんを切り取る治療をします。浸潤が深いものでは、内視鏡治療ではがんを取り残してしまう可能性やリンパ節転移を起こしている可能性があるため、手術によってがんの部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します。
ステージII、ステージIII
ステージII、ステージIIIの大腸がんでは、手術によって、がんの部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します。切除したリンパ節にがんの転移があった場合には、再発予防のための抗がん剤治療(術後補助化学療法)が勧められます。
ステージIV
ステージIVの大腸がんの場合は、がんの部分を取り除いただけでは、他の臓器に転移したがんがまだ残っている状態なので、すべてのがんが取りきれたことにはなりません。一般に大腸がんでは、肝臓や肺に転移したがんも、手術で切除することが可能であれば、積極的に手術を行います。何回かに分けて手術を行うこともしばしばあります。ただし、転移のある場所や数、その時点での体の状態などに応じて、手術以外の治療法(化学療法や放射線療法)をお勧めすることもあります。
2019年版大腸癌治療ガイドライン一部改編
転移形式
がんが大腸の壁に深く食い込んでいくにつれて、大腸の壁の中にあるリンパ管や血管にがん細胞が入り込み、がんが発生した場所(原発巣)以外の場所に“飛び火”することを「転移」と言います。
大腸がんでは肝臓や肺、リンパ節への転移が多くみられ、骨や脳など全身に転移することもあります。転移の仕方には、大きく分けて以下の3種類があります。
大腸がんの転移
NPO法人キャンサーネットジャパン制作冊子「もっと知ってほしい大腸がんのこと」より引用
①リンパ行性転移
がん細胞がリンパ管に入り込み、リンパ液の流れに乗ってほかの臓器に転移すること。
②血行性転移
がん細胞が血液の流れに乗ってほかの臓器に転移すること。
③腹膜播種(ふくまくはしゅ)
がん細胞が大腸の壁を突き破り、お腹の中(腹腔内)に種をまくように散らばってほかの臓器に転移すること。
がん検診
無症状の時に年に一度の大腸がん検診を
大腸がんは、早期に発見すれば高い確率で完全に治すこと(治癒)ができます。しかしながら、早期のうちは自覚症状がないことが多く、自覚症状が現れた時には既に進行している可能性があります。
だからこそ、無症状の時に年に一度大腸がん検診を受け、早い段階で大腸がんを発見し、適切な治療を受けることが大切です。
対象は40歳以上
大腸がんは40歳頃から増えてきます。また、近年、大腸がんの若年化が進んでいるとされています。40歳以上の方は毎年の便潜血検査や定期的な内視鏡検査を受けるようにしましょう。
便潜血検査
大腸がん検診は様々ながん検診の中でも大腸がんによる死亡のリスクを下げるもっとも効果的な方法として普及しております。
大腸がん検診で陽性が出たら詳しい検査を受けるよい「きっかけ」だと思いましょう。痔などによるものだと自分で判断せず、精密検査を受けることとお薦めします。精密検査をして大腸がんが見つかる可能性は、便潜血検査陽性の人の1%以下となっています。
早期発見のメリット
大腸がん検診により早期発見できれば、次のようなメリットがあります。
- 1. 治療が簡単にすみます。
お腹を切ることなく、内視鏡で治療することができれば、身体への負担が少ない治療ですみます。 - 2. 治療に要する費用や時間の負担が少なくてすみます。
- 3. 治療後の日常生活への影響が少なくてすみます。
- 4. 家族への負担が少なくてすみます。
また、検診を受けて大腸がんでないことが確かめられれば、安心感を得ることができます。
大腸がん検診の受診率
大阪府の大腸がん検診は、35%、3人に1人程度の検診率にとどまっています。40歳になったら毎年、大腸がん検診を受けるようにしましょう。